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●旅のルート
2003年6月1日 西郷→松江 レインボープラザ
◆午後のレインボーで出発、夜は映画鑑賞
6月2日 松江→鳥取砂丘→兵庫・湯村温泉 伯雲亭
◆台風一過、快晴の山陰路を一路東へ
6月3日 湯村温泉→燕趙園→岡山・湯原温泉 つるや
◆海辺のドライブ、そして山間の温泉地へ…
6月4日 湯原温泉→蒜山高原センター→西郷  
◆蒜山高原センターは遊園地

●旅のはじまり〜松江
 旅の始まりはいつも松江からだ。特に今回は町内の共同作業の都合で朝のレインボーに乗ることができなかったので、島前経由の午後の便で本土へ向かうことにした。だから必然的に松江(もしくは米子)で一泊するというのが最も一般的な経路となるだろう。夜にかけて車を走らせてもいいのだが、それだと疲れるだけだ。特に一刻を急ぐという訳でも無いのだから、ここはのんびりと一日目は松江で映画鑑賞でもすることにして西郷12:48発のレインボー2に乗り込んだ。
 前日の台風の影響が心配されたが、隠岐海峡は穏やかというほどではないものの、6月の陽光がまぶしいくらいの上天気となった。波も思ったほどではないようだ。島前の内海を出る頃には、朝の作業の疲れからか眠ってしまったようで、気づけば本土の島影が間近に迫っていた。
 七類港で予約していたレンタカー(カローラ・ワゴン)に乗り換えると、松江へ向かう。もう何度も走ったおなじみの道だ。普段レガシー・ツーリングワゴンに乗っているせいか、同じステーション・ワゴン型のカローラ・ワゴンは何の違和感もなく運転もスムーズだ。ただひとつだけ、シートの調整がなかなかぴったり合わなかったことを除けば。松江のカメラ量販店では、この旅で出くわすであろう夜間の撮影に備えて、ISO400と800のフィルムを10本ばかり買った。いままでISO800は使ったことがないので、どんな画になるのか楽しみではある。
 夜には映画「8miles」を観た。アメリカの最下層の社会で生きる白人少年。さまざまな困難に直面しながらもラップの天才的才能を自ら見出し、生きる自信をつかんでいく…簡単に言えばそんなストーリーだが、2時間十分楽しめた。明日からの長駆ドライブに備えて体のリフレッシュだ。

●鳥取砂丘
 山陰地方は朝から気温がぐんぐんと上がった。まだ午前9時を過ぎたばかりというのに、車のウインドウ・ガラス越しに紫外線がちくちくと肌に痛いくらいだ。山陰道を米子へ向かいながら大山の辺りを見ると湿度が高いのか、ぼんやりと煙ったようになって大山の秀麗な姿を見ることが出来ないのが残念。東伯町までほんの1時間あまり。羽合町からはこの春開通したばかりの青谷道路で快適なドライブが続く。9時過ぎに松江のホテルを出発してお昼過ぎには鳥取砂丘に到着した。3年前に来た時に比べて優に30分は早く着いた計算だ。途中、道路工事の渋滞が無ければもっと早く着いただろう。
 山陰の道は今やっと整備され始めたと言っていい状況だ。自動車専用道(高速道)もまだ細切れ状態だが、以前の国道9号線のみの頃と比べればかなり改善されていると言えるのかも知れない。ただ、幹線の中国自動車道に接続するのが米子自動車道と浜田自動車道のみという状況では、東西に長い山陰の交通事情を十分に吸収しているとは到底言えないのも事実だ。特に鳥取県東部は鳥取市を抱えながら整備が遅れていると言わざるを得ない。
 閑話休題。鳥取砂丘は鳥取市から福部村にかけて連なる、東西12キロ南北2キロの広大な砂丘だ。大山山麓を過ぎた鳥取県中部からは砂地の海岸線が断続的に続くが、それはこの鳥取砂丘で最大になるのである。月曜日ということもあってか、観光客の姿はぼつぼつというところ。駐車場にも車は少ないものの、ナンバープレートを見ると関西や関東、遠くは北海道のものまであり、さすがにここはメジャーな観光地なのだと再認識した。
 駐車場の側の階段を上って砂丘に出ると、一瞬遠近感を失ってしまいそうになる。遠くを歩く人の姿が砂丘の巨大さを浮き彫りにするが、もし何も比較する対象物が無ければ、眼前に盛り上がった砂丘の大きさを正確に言い当てることはきっと不可能に違いない。
 砂地に一歩足を踏み出すと、靴の中に細かな砂が入り込んでくる。今回は鳥取砂丘がメインではないので、とても砂丘を歩けるような装備ではなく、砂丘の端に立って、人々が遊ぶ姿や観光馬車の様子をボーっと眺めていた。正午を過ぎてますます日は高くきつくなって来た。昼食を済ませると、ぼちぼち最初の目的地・湯村温泉へ向かう時刻のようだった。

●湯村温泉
 砂丘の海岸べりの道路をしばらく走って国道9号に合流した。この辺りの9号線はついスピードを出しすぎてしまうが十分注意が必要だ・・・何にっておまわりさん (~_~;) 
 そうこうしているうちに道は既に兵庫県。湯村温泉はもうすぐだ。鳥取から40分ほどだ。湯村温泉のある兵庫県北部の温泉町は、兵庫県とは言っても南部の瀬戸内沿岸とはまるで様子が違う。県庁所在地の神戸をはじめ、西宮、芦屋など阪神間の都市や姫路、加古川といった穏やかなイメージとはまるで異なるのだ。日本海に面した北部は山陰海岸の一部でそのまま京都府北部へと連なる海岸美は一見の価値ある場所だ。
 湯村温泉は、そんな山陰海岸からすこし内陸に入ったところに位置する。早坂暁原作で吉永小百合が主演したドラマ「夢千代日記」の舞台としても有名だ。夢千代日記をはじめ数々のドラマに登場するJR山陰本線「餘部鉄橋」も近い。
 さて、私たちが宿に選んだのは鳥取側からの湯村温泉の入り口付近にある「味の宿 伯雲亭」という小さな旅館だ。部屋は全部で7部屋で宿のご主人と女将さん二人ですべて切り盛りしているという。シーズンオフのせいか、この日の宿泊客は私たち二人だけだった。チェックインを済ませると、早速湯村温泉の中心地・荒湯の散策に出かけた。まだ日が高く暑いくらいで、夕食までにはまだ少し時間があるのだ。
 町の真中に川幅10〜20メートルほどの春来川がゆったりと流れ、その両岸には遊歩道が付けられていて川面のすぐそばを歩くことが出来る。子供たちが川で遊ぶ姿を見るのもなんだか久しぶりな気がする。鷺や鴨もいて小魚を獲っているようだ。鷺は人に慣れているのか、私たちがすぐそばまで近づいても驚いて逃げる様子もない。
 遊歩道をぶらぶらと10分ほども歩くと、湯村温泉の中心地「荒湯」が見えてきた。噴出す泉源の温度は98度もあって、ほんの10分ほどで温泉卵もできてしまうほどだ。川岸には足湯が設けられていて、もちろん無料でだれでも利用することができる。足湯に足を漬け、そよとした夕暮れ間近の川風に包まれながら目の前で餌を探す鷺をぼんやり見ていると、時間の経つのも忘れてしまう。こんな幸せな時間があったのだと気づかせてくれる場所だ。もちろんここは町の真中であり、周囲に気を配ると車の走る音や、どこからともなくながれる音楽、人々の話し声など生活の雑音も聞こえるが、それさえも時の流れの背景でしかない・・・。
 夢千代を記念した銅像や手形が飾れれているのも、この荒湯だ。湯村温泉を紹介する雑誌などでおなじみの場所でもある。私たちは荒湯近辺を写真に収めると、一旦「伯雲亭」にもどり温泉と食事をしてから夜の荒湯にもう一度来て見ることにした。

川岸で遊ぶ子供たち/「荒湯」の周りの石畳は温泉の熱によって裸足だと火傷するほど熱い


●味の宿「伯雲亭」
 「伯雲亭」には男女それぞれの内湯と露天があるが、今日は私たちのみということで女湯を一緒に使ってくれという。ロビー横から風呂へと続く廊下は渡り廊下風になっていて、期待感(?)が高まる。内湯は岩風呂風で、ガラス戸で露天風呂へとつながっている。小ぢんまりとした露天風呂は、小さな庭の池の風情だ。まだ外は十分明るいので、国道をはさんで建っている温泉中学(いい名前だ)の窓からこちらが見えそうなのが気になるが・・・。手入れの行き届いた松の植え込みを眺めながら肩まで湯船に入っていると、長距離のドライブの疲れも吹っ飛んでしまうほど気持ちがいい。露天風呂のいいところは、長時間そうやって湯船に入っていてものぼせることがないところだろうか。体の疲れがゆっくりと時間を掛けて癒されていくのが分かる。
 廊下にはこれまで雑誌などで紹介された記事が切り抜いて額に飾ってあった。それらを見ると「伯雲亭」の魅力は第一に家族的なもてなしであるという。事実、宿に泊まっているというよりはどこか親戚か知り合いのお宅にお邪魔している、そんなくつろいだ感じがとてもいいのだ。
 魚介類と但馬牛の「火鉢会席」もこの宿で食すとどこか懐かしい味に感じる。分厚い肉の切り身や貝を火鉢であぶるのだが、香ばしい香りが部屋中に満ちてますます食欲をそそる感じだ。冷酒を頼むと、女将は純米酒を出してくれた。「辛口」とのことだが私には甘口、と言って言いすぎならそう辛くないと感じた。きっと隠岐の酒が辛いので他の地方の酒があまり辛く感じないのだろう。会席と一緒に出された牛の握りは、ねたが口いっぱいになるほど大きく、是非味わってほしいと思うほど美味だった。

●夜の荒湯
 少し酔いを醒ましてから、私たちはもう一度荒湯へと出かけた。旅行ガイドブックに夜間ライトアップされた写真が載っていたからだ。十分に照明が灯された、昼間歩いた川沿いの遊歩道を再び歩いて行くと、生活感のある雑音はすっかり影をひそめ、川の音が心地よく辺りを満たしている。遊歩道から見上げる川辺に建つホテルの明かりもきれいだ。昼間見た鷺もまだ餌を探しているのか、そう広くない川の中ほどでじっとしている姿が街灯の光にかすかに浮かび上がっている。私たちが近づくと「ぎゃっ」という、なんとも言えない泣き声を一声残して飛び去った。国道からそれほど離れているわけではないのだが、土手の上の道路を走る車もほとんどなく、川のせせらぎと蛙の鳴き声だけが響いていた。
 荒湯の付近では浴衣姿の観光客の姿がちらほらと目に付くが、昼間ほどの人出は無く足湯を使う人もまばらだ。近くの川沿いには土手の石垣に湯村温泉を訪れた著名人の手形が何十と飾ってある。そのメインは名誉町民ともなっている夢千代の吉永小百合、早坂暁などだが、そのほかにも芸能人、スポーツ選手、作家など多くの人がこの地を訪れたのだと分かる。
 ライトアップされた橋や銅像は静かに佇んでいた。シーズン中はもっと人出も多いのだろうが、何しろ6月はじめのオフ・シーズンということもあり、本当に静かだ。ISO800で撮った夜景は、よく見ると手ブレしているが、それでも手持ち撮影とは思えないくらいの映像だ。ISO800のフィルムを用意していて大正解だった。同じ場所を妻も撮影したのだが、ISO400だったので手ブレが大きくなってしまい、非常に残念がっている。
 荒湯の近くの寝静まったかのような町を一回りして、お土産物屋に立ち寄った。いくつかのお土産を手に「伯雲亭」に帰ったのは9時半頃だっただろうか。就寝前にもう一度露天風呂に入ったのは当然のことである。

ライトアップされた夢千代像。昼の賑わいも、夜はとても静かだ。


●海岸線をドライブ
 翌日も朝から絶好の好天気だ。ドライブには少々暑すぎるくらいである。旅行していていいなぁと思うことの一つは、朝からしっかりと食事ができること。普段どうしてもパンなどで簡単に済ませてしまうことが多いので、朝食をゆっくり味わいつつ、適度な量が摂取できるのはとてもいいことなのだ。
 朝食を済ませると、もう湯村温泉ともお別れだ。帰りは昨日通ってきた国道9号ではなく、温泉町から浜坂町へ至る県道47号線を通り山陰海岸へと出た。ここから国道178号線沿いに山陰海岸を鳥取県・岩美町へ行くことにしたのだ。入り組んだ海岸線に沿って走る178号線は、至るところに眺望スポットがある。小高い丘の上、白砂の砂浜、また道端に色とりどりの花の咲く一帯もある。そんなワインディング・ロードを少しスピードを落として車を走らせると、初夏の風に乗って潮騒が聞こえてくるようだ。
 岩美町の浦富海岸ではハマヒルガオが砂浜に自生している。この海岸に歓声が響くのも間近だろう。福部村に入る辺りで国道9号に合流すると、あとは県中部の東郷池近くまで道なりに進むことにした。泊村から県道22号に入って、東郷池を右手に見ながら進むと、日本最大級の中国庭園「燕趙園」の特徴的な建物が目に入って来た。
浦富海岸のヒルガオの群生。波の音が穏やかに包んでくれる/晴天の山陰海岸は夏を思わせる陽気

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